不動産業でアジアに進出
日本と台湾をつなぐ架け橋に
株式会社アンビシャス【千代田区一番町】
小川 猛志
- 台湾の人の温かさ、そして日本の不動産ブームにビジネスチャンスを感じた
- 動かなければ始まらない! まずは行動を起こす
- 求められるのはスピードと白黒はっきり伝えること
- オールジャパンで共存共栄を目指したい
海外進出先として、台湾に現地法人を設立したのはなぜですか?
台湾の人の温かさ、そして日本の不動産ブームにビジネスチャンスを感じた
私はサラリーマン時代から不動産業界にいたので、入り口は不動産業です。と同時に不動産売買のほかに、毎月コンスタントな売り上げが望める事業もやりたいと思っていました。
当時はシェアオフィスという言葉は今ほど知名度はありませんでしたが、やり方によってはビジネスチャンスになるのではないかと思ったのが、シェアオフィス業を始めることになったきっかけです。
シェアオフィスが軌道に乗ってくると、今度は不動産業の仕事に力を入れてしっかりと基盤を固めていきたいと考えるようになりました。しかし日本国内だけではマーケットも限られています。そこで、海外、特に今勢いがあると感じたアジア圏に目を向けたんです。
中でも台湾は、訪れたときになんともいえない懐かしさを感じました。昭和の古き良き日本と似た空気があるというか、人はあったかいし、日本語も通じやすい。さらに台湾人の間で日本の不動産の爆買いブームが起きていたのも台湾に興味を持った理由でした。とはいえ、台湾でどうやって法人を作れば良いのかもわからないし、人脈もありません。
偶然知り合ったある人に「中途半端な気持ちでやっていたら、華人経済圏で信用は得られない」「本気でやるなら会社を作ったほうがいい」とアドバイスをいただきました。私はその場で「会社を作ります!」と即断即決(笑)。数々の偶然と出会いが重なって、2014年に台湾に法人を設立しました。その頃お世話になった方たちとは今でも公私ともに良い関係を続けています。
台湾ではどのように事業を展開していったのでしょう?
動かなければ始まらない! まずは行動を起こす
会社を作ったはいいが、台湾でどのような事業をするかはまったく決めていませんでした。台湾の不動産会社が開催するセミナーにも参加して、日本の不動産がとても人気だということがわかってきたので、まずはウェブで日本の不動産情報を提供することにしました。
そのうちに、だんだんと投資家も集まってきて、逆にインバウンドで台湾のお客さまを獲得したい日本の不動産ポータル企業が、パートナーを探しているという話もいただくほどに。当時台湾で開催した説明会には150名近くの投資家が集まりました。
ところが、説明会に投資家が集まっても、そこから先の商売にはつながらないんです。それは私たちだけではなく、台湾に進出している日本の不動産会社がどこも感じていることでした。
ある台湾のお客さまに言われた言葉が「日本の不動産会社は説明会ばかり開くが、どうして常に最新情報が見られるサロンがないのか」です。
日本はまだまだ物件ありき。説明会でもウェブ上でも気に入った物件があれば、お客さまは問い合わせをしてくださいます。確かに台湾は日本以上にITリテラシーは高く、なんでもネットで検索をする傾向にあります。しかしネット上だけでは信用されないんです。大きな投資を考える富裕層は、何かあったときにきちんとした対応をしてくれるリアルな店舗が台湾にないと次の一歩には進みにくい。チャイニーズマーケットでの信頼は得られません。
台湾のお客さまが情報を得るために足を運んでくださる場所が必要だ。そう感じて台北にサロンを開きました。これまでにも台湾の企業が日本の不動産情報を一部案内していたり、大手の日本企業が自分たちが管理する物件を紹介して接客をする店舗はありましたが、何社もの企業が持つ物件の情報が一度に得られる場所はとても画期的だったんです。
台湾のお客さまに求められること、 心掛けていることは何だとお考えですか?
求められるのはスピードと白黒はっきり伝えること
台湾のお客さまはまず決断が早い。そして白黒はっきりしているところが特徴ですね。「なかなかいいですね」「検討します」といった日本人特有のオブラートに包んだような曖昧さは受け入れられません。YesかNoかはっきり言うし、と同時に私たちにも明確な答えとスピードが求められます。
あとは、損得感情も日本以上にシビア。新しもの好きですが飽きやすいところもあるので「コイツのところに行けば得する情報があるな」と思っていただけるように情報を集めることも大事です。日本ではあまり損得を前面に出すと反感を買うこともありますが、台湾ではそんなことを言っていては商売になりません。台湾のお客さまはどういうメリットがあるか、いくら儲かるかが知りたいのです。
一方では日本よりも担当者の人柄を見て、一度信用を得たらとことん付き合ってくださるところもあると感じます。人として誠心誠意お客さまと接することが、当たり前ですけど大事ですね。「小川さんがいいって言うなら…」とおっしゃっていただけるのは嬉しいことです。
株式会社アンビシャスでの台湾支援事業について教えてください。
オールジャパンで共存共栄を目指したい
台湾だけではないですが、海外に進出するということは、気軽に1〜2日で現地法人を作って成功できるほど甘い世界ではありません。中長期的スパンでブランディングや認知度を高めていく覚悟が必要です。
私は人も時間もお金も使って一から台湾で法人を立ち上げました。法人設立から事業の進め方、プロモーションの仕掛けまで、その楽しさも大変さも学ばせていただきました。自分が経験してきたことを生かして、台湾に進出したい日本企業の支援に力を入れていきたいです。
私が提唱している海外への進出サービスは台北サロンのようなシェア型。
サロンをご利用いただいているデベロッパーさんは、それぞれ日本国内ではコンペティターになります。でも台湾の人に日本を知ってもらったり、日本のものを買ってもらうとしたら、争っている場合ではありません。
ライバルを蹴散らすのではなく、それぞれの得意なことを持ち場持ち場で生かして、みんなで成功しようという共存共栄の考え方が、シェアオフィスを始めたころからの私の事業のベースです。
最近ではホテルチェーンや化粧品メーカーといった、不動産業以外の企業からの相談も増えてきました。これからは業界にこだわることなく進出支援もやっていこうとしています。
私の得意分野は不動産業ですが、それはたまたまスタートが不動産業界だっただけのことです。私が経験してきたことはすべて、他の業種でも通用するものだと思っています。株式会社アンビシャスは今もこれからも、コンサルティング会社として企業さまを全力でサポートしていきたいですね。
イイタン一問一答
出身は
生まれは立川市、社会人になるまで立川で育ち、今は府中市に住んでいます。
好きな駅は
やはり府中駅。駅前のケヤキ並木が見事で、緑が多いところです。ターミナル駅としての利便性もあって、新旧のコントラストがあるところが好きです。
不動産業界に入ったきっかけは
父親が建築関係の仕事をしていたためか、衣・食・住のうち、住に対する意識が一番強かったんです。私は理系出身ではないので建築系には進みませんでしたが、将来父親と仕事でコラボレーションができたらいいな、と思って不動産業界を目指しました。
不動産業の楽しさとは
不動産はダイナミックなところですね。金額も大きいのでプレッシャーもありますが、達成感は格別です。
尊敬している人
経営者としては舩井幸雄さんです。 私はもともと船井総研系列の会社にいたので、船井理論が叩き込まれていると思います。
イイタンについてどう思いますか
人にスポットを当てるというのは素晴らしいサービスだと思います。台湾でもやってみたいですね。
編集後記
「動かなければ何も始まらない」と話す小川さんは、思ったことはすぐに行動に移す、エネルギーのある人だという印象を受けました。小川さんのバイタリティー溢れる行動力が良い出会いを生み、これまでの数々のご苦労を乗り越えてこられたと想像します。そんな小川さんが肌で感じられた台湾の情報や成功のコツ、積み上げてきたノウハウは必ずや台湾進出の大きな後押しとなることでしょう。
取材/撮影 和田 文/並木 郁磨
株式会社アンビシャス
小川 猛志
〒102-0082 東京都千代田区一番町10-8 一番町ウェストビル5階
1998年
中央大学経済学部卒業
1998年
株式会社アップタウン入社
2004年
株式会社船井財産コンサルタンツ入社
2011年
チームパズル株式会社設立、株式会社青参設立
2013年
株式会社アンビシャス設立、代表就任
2014年
台湾法人 亞洲大志國際顧問有限公司設立、代表就任
Pick Up Item
【スマートフォン】Ambitiousのロゴが入ったスマートフォン。会社のロゴ入りのケースを使っています。いつも持ち歩くといえば、このスマートフォンくらいですね。台湾で占っていただいて、赤は私のラッキーカラーでもあるんです。