ペットとの都会暮らしを、シェアハウスで多くの人へ。
遊休物件の利活用提案に、ちょっと変わった経歴が生きてます。

田中宗樹

  • 1997年 大学卒業後、水処理のエンジニアリング会社に入社。九州各地での現場・営業を10年経験した後、九州を地盤とする国会議員の秘書に転じ、7年務める。
    2016年 ペット共生シェアハウスの設計施工・仲介会社で2年の勤務を経て、物件の企画と管理を担う部門としてHOUSE-ZOOを設立し独立。

どんな仕事を?

空いている物件を、足りていないペット共生の住まいへ変えるお手伝い。

ペット共生住宅を得意とする建築会社へ3年前に加わり、これまで新築とリノベーションを合わせて15棟の企画やコンサルタントに携わってきました。現在はこの建築会社の役員を務めるかたわら、ペット共生シェアハウスの企画・管理部門として昨年設立した「HOUSE-ZOO」の代表をしています。

私は九州の出身で、犬や猫と一緒に暮らすのがごく当たり前の環境で育ちました。今から7年前、地元で国会議員の秘書をしていた私は永田町での勤務が決まり、東京で単身用の部屋を探し始めたのですが、首都圏ではペットと住める賃貸物件が少なく、しかも初期費用や家賃が高額なことを知って驚きました。ちょうど同じころ、建築会社の経営者であるいとこがペット共生タイプのシェアハウスを初めて建てたので、「ものは試し」と、そこでの共同生活にチャレンジしてみたんです。

10人ほどの定員はあっという間に埋まり、さまざまな方と、一緒に来た動物たちに囲まれて過ごす中で「こういう暮らしには、まだまだニーズがある」と確信しました。もともと建設関係の知識があり、また起業するのが夢でしたので、この可能性に賭けようと決断。いとこを手伝いながら、社会問題化しはじめた空き家の有効活用につながるペット共生シェアハウスの営業を始めるようになりました。

元・国会議員秘書。いまも役立っている経験は

人と人をつなげ、信頼の輪を広げること。私の仕事の原点です

議員秘書として過ごした7年間は、私の仕事の原点です。当時の担当業務は多種多彩で、平たく言えば「議員本人を有権者に売り込むための、あらゆる仕事」。代理出席した式典で壇上に立つといった華やかな面もありましたが、待ったなしの対応が日常で、風呂でもトイレでも携帯電話が手放せません。しかも法律の縛りが厳しく、会食でおごってもおごられてもダメという中での戦いでした。

企業経営者、各界の重鎮、医療・福祉の専門家など、さまざまな方から意見をうかがい、少しでも実現に近づく方法を考える。紹介でつながる関係を大切に、信頼の輪を少しずつ広げていく。秘書として鍛えた物事の進め方は、まったく違う仕事をしている今も変わりません。「ペットと一緒に住むこと」をテーマにして以来、建築・不動産関係の人脈構築だけでなく、ペットショップや動物病院、給餌器メーカー、里親探し団体などの多くの方と知り合い、協業の橋渡しもしています。人と人をつなげていくことで、ゆくゆくは自社の事業も成長していくと信じているからです。

ペット同伴の共同生活、運営が大変では?

募集も管理もお任せで大丈夫。要点が分かればオーナーご自身でも。

空き部屋・空き家の活用に悩む典型例は「自室を持っていた子どもの独立」、あるいは「広すぎる実家の相続」だと思います。平均的な世帯人数は年々減っており、ご自身が持て余すほどの家は、たいてい他の方にも大きすぎるためです。

土地の切り売りはもったいないので1階をオーナー宅とし、2階にいくつかワンルームが並ぶ賃貸併用住宅へ建て替える方もいらっしゃいますが、これも上階を細切れにしています。それを避けるなら、考えられるのは各階独立の2世帯住宅です。

いずれかの階をしばらく使わない場合は、間取りもそのままシェアハウスとして貸し出すのが有効。中でも「ペット共生タイプ」は合理的な選択肢になりえます。というのも、ペット可物件の割高な住居費に悩む単身の飼い主は多くいて、みんなで設備を共有し、交流を深めながら割安に住むことができるシェアハウスとの相性がとてもよいからです。2世帯住宅以外では「1軒丸ごとシェアハウス」が適するケースもあるでしょう。

小型犬や猫、鳥などへの対応なら、通常の住宅と設備の違いはわずか。トイレなどを多めに設け、においや傷が付きにくい内装材を選ぶ程度でも大丈夫です。むしろ大切なのは、募集や管理、周辺住民への配慮といった運営面で、ここを丁寧にできるのが当社の強みでもあります。 一時期騒がれた「脱法ハウス」のようなリスクは皆無という理解を得るため、シェアハウスのオープン前には、近隣の方々に内部を見学いただいています。入居の審査は面談で行い、共同生活への向き不向き次第ではペット可のアパートをお勧めすることも。無事入居いただいた後は定期的に懇親会を開催し、ペット保険など共通の関心事に詳しい方をゲストに招くといった仕掛けも絶えず盛り込んでいます。

このほか、入居後少しずつペットを慣らすためのアドバイスや、ささいなトラブルの仲裁なども欠かせませんが、すべて私にお任せいただいて結構です。ただ、リタイア後のオーナー様に要点をお伝えすると、楽しみながらなさっているケースも多いですよ。住人の大半は30代前後の女性なので、娘のように思えるのかもしれません。

これから目指すこと

人とペットのコミュニティーから新たなサービスを

不動産の利活用としてペット共生シェアハウスをお選びいただいたオーナーからは幸い好評で、2棟目を検討中の方もいらっしゃいます。入居の経済的なハードルが低いため、空室のリスクが低く抑えられる利点はあるのですが、正直なところ収益物件として見たときには、飛び抜けて優秀というほどではありません。

 

にもかかわらず、こうしたシェアハウスにご満足いただけているのは、人とペットの「コミュニティー」があるからだと思います。熟年以降のオーナーご夫妻はよく「どちらかが先立ったら、残されたほうがシェアハウスで暮らす」とおっしゃいます。最期までひとりぼっちにならない安心感、精神的な価値が、経済的なメリットを上回るようなのです。

いっぽう、入居者の生活で言うと、ペットと暮らす独身者同士は境遇や価値観が似ているだけに、結婚相手としてはよい候補です。ただ、それぞれのペットと家族同然の関係にあるのも確かで、ひとり親同士の結婚と同様、それまでのお互いの生活を尊重することが成功のカギになります。なんとか婚活に協力できないかと、よく考えるんですよ(笑)。

仕事をするからには本当に世のため・人のためになることがしたいし、それが長く続ける方法だとも思います。ペットという共通項で人が集まるシェアハウスは「多世代共生」「シニア向け住宅」「障害者雇用」など、社会的ニーズに応えて新たなサービスを生み出していくプラットフォームになれると私はみています。勝負は今後2、3年。まとまった実績をつくって安定事業として確立し、次の展開につなげたいと思っています。

仕事の必須アイテム

「犬印鞄製作所」のかばん

使いやすさに惹かれて、すでに4つ購入。仕事との相性も抜群なネーミングと、犬のイラストが入ったタグがポイント。「HOUSE-ZOO」の刺繍も入れたオリジナルの一品。

イイタン一問一答

Q.出身は

宮崎県宮崎市

Q.現在のお住まいは

東京都渋谷区

Q.好きな駅は

お酒の席でいろんな方とお話しする中で学ぶことが多いので、自宅に近く、いい店もたくさんある恵比寿が気に入っています。

Q.不動産業界に入ったきっかけ

建設関連の経験を生かしてシェアハウスの仕事を始めましたが、用地の調達段階から事業をトータルで手がけ、また「次の1棟」に向けた資金計画も含めてオーナー様と長くお付き合いしていくためには不動産業の知識が必要と分かり、少しずつ勉強を始めるようになりました。

Q.不動産業の楽しさとは

入居者のペット同士が仲よく暮らしていると聞いたときはうれしいですね。人間同士なら理性も働きますが、動物はそうもいきません。間に入ってサポートするのは大変ですが、やりがいを感じる部分でもあります。

Q.尊敬している人

議員秘書時代に知り合った、ある不動産会社の社長です。仕事に向き合う姿勢を学んだだけでなく、シェアハウス関連の事業を始めたばかりの私に不動産の重要性を教えてくださった方。当社グループは現在、不動産取引の免許を取り、宅建士も在籍していますが、そのきっかけを作っていただきました。

Q.イイタンについてどう思いますか

私も人と人のつながりを大切にしたいと思っているので、見ているところが一緒。不動産の取引を、人を見て決めるというコンセプトにすごく共感します。

編集後記

遊休物件を対象にペット共生シェアハウスとしての活用を提案し、完成後の管理や入居審査、コミュニティーづくりまでサポートしている田中さん。とにかく手間がかかりそうな仕事について根掘り葉掘りうかがいましたが、「いろんな人や企業をつないでいきたいんです」と、終始笑顔で分かりやすく説明いただきました。公共に仕える議員を支えて守り、必要とあらば代役にもなるハードな秘書経験の持ち主とあって、穏やかな居住まいと多彩な人脈、何より「本当に世のため、人のためになることを」という言葉が印象的。住まいの貸し手と借り手、さらに人間と動物の間を取り持つ要として、どんな場面でも何とかしてくれそうな安心感は絶大です。
取材/撮影 相馬大輔