いい営業担当を演じる必要はない
裸の自分をさらけ出す
株式会社グリーンフィールド【港区南青山】
羽生 卓
- 当事者意識を持って市場の変化に対応していく
それには、フリーエージェント制が最適 - 時間とは、即ち人生
それくらい時間を大切に思っている - 私の得意分野は“つなぐ”こと
これを軸に事業領域を考えていった - 一人でも多くの不動産取引のプロを育てたい
当事者意識を持って市場の変化に対応していく
それには、フリーエージェント制が最適
不動産取引では、売主さんと買主さんは売買の当事者です。しかし仲介は、間に立つだけで、当事者ではありません。自分が買うなら、もしくは売るならどうするか。当事者意識を持ってお客さまと対峙するのは、とても難しいことです。それができるのは、個人で活動するフルコミッションのエージェントではないかと考えました。
そこで注目したのが、大学で研究したフリーランスです。日本では、フリーランスのエージェントは、まだあまり知られていませんが、日本以外のアメリカ・アジア・ヨーロッパの不動産仲介は、ほとんどがエージェント制なんです。
『お客さまー会社ー営業担当』ではなく、『お客さまー営業担当ー会社』という図式。
海外では、お客さまは会社を選ぶのではなくて、人柄・知識・経験・実績などから、自分に合った営業担当を選ぶのが当たり前です。そして、日本も徐々にではありますが、その方向に向かっていると見ています。
なぜなら、市場の多様化が進む中で、とかく不透明なことが多いと思われがちな不動産業界をよりわかりやすくするためには、市場の要望に細かく対応していく必要があるからです。
フリーランスのエージェントには企業の利益を優先させるという論理がありません。会社の方針や考えに左右されず、自身の責任においてフレキシブルに行動できます。一方でどのような結果に対しても責任を負うという覚悟も必要。自ずと当事者意識が生まれます。そのようなエージェント集団を作ろうと思い、立ち上げた会社がグリーンフィールドです。
時間とは、即ち人生
それくらい時間を大切に思っている
私が人生で一番大事にしているのは時間です。人生=時間といっても過言ではありません。
不動産業界に入った時から変わらないのですが、私は常に、やりたいことをやりたい性分でした。大切な時間を、やりたくないことに費やしたくない。しかし、社会の組織の中にいると、会社の成長とともに、責任やポジションが、少しずつ変化していきます。
変わっていくことは大事ですが、自分のやりたくないことも、やらなくてはならなくなり、会社の方針や目標と自分の考え方にズレが生じるようになったんです。長年不動産業界に携わってきて、プレイヤーでいることが一番面白いとも感じていて、75歳までは現役として現場で働きたいという思いもありました。
だとしたら、ピラミッド型の組織の中にいるのではなく、自分の時間を使いたいように使える環境に身を置くべきだと考えました。それには誰も雇わず、誰にも雇われない、自分一人でビジネスをやるのが一番だ、という結論に達したんです。
私の得意分野は“つなぐ”こと
これを軸に事業領域を考えていった
若いときは、年間5,000時間は働いていましたが、改めて自分が最も大事にしている時間を、どのように使っていくのかを考えました。働くということは、人生の一部であっても、全てではない。そう思った瞬間、視野が大きく広がり、やりたいことが山ほど見えてきたんです。
企業とは、普通は売上を上げて利益を出すもの。利益が出れば、そのお金を再投資していくのが普通です。しかし、お金で投資せずとも、労働時間を半分にして、同じ売上・利益を上げることができれば、時間が半分余ります。私は、その時間を投資することができると気づきました。
2010年に立ち上げたAVATAという不動産会社では、月の労働時間は約200時間ほど。私は、仕事の内容を見直し、削れるところは削って、半分の100時間でやることにチャレンジしたんです。そして、余った100時間で大学に行くことにしました。フリーランスについて研究し、日本には1,000万人以上のフリーランスが存在していると知ったんです。
同時に、私が本当にやりたいことはなんだろうと考えていくうちに、“つなぐ”という言葉にたどり着きました。“つなぐ”と“フリーランス”をキーワードに、自分のビジネスの事業領域を変えていけば、新しいことができるのではと考えたんです。
一人でも多くの不動産取引のプロを育てたい
が取り組んでいるのは、個人で活躍できる不動産エージェントを育成し、サポートすることです。彼らの共通項は、未経験・時間的制約があるような人たちです。普通の不動産会社では、このような条件での採用は、なかなか難しいでしょう。しかし私は、それでも可能性のある人たちと、たくさん出会ってきました。
彼らが働きやすい環境を整え、不動産会社に就職しなくても、不動産ビジネスを学ぶことができるプログラムを作って、イチからエージェントを育成しています。
中でも一番力を入れているのは、マーケティングです。これからは従来型の広告集客ではなく、先ず人と人が繋がり、その先にビジネスが生まれる時代です。情報が溢れ返る中で、何を信用するか。それはすでにつながっていて、信頼できる人から得られるものではないでしょうか。そのつながりを作ろう、というのがグリーンフィールドの考え方です。
フリーランスですから、自分の意思決定で動き、当事者になれます。いつ・どこで・どのようなやり方でビジネスをするかはその人次第。一つだけ縛りがあるとしたら、それは倫理観です。現在グリーンフィールドと契約しているエージェントは52名。ほぼ全員が未経験者で、本業と掛け持ちしながらやっています。土日だけ活動している人や、主婦をやりながら仕事をしている人も。いずれも限られた時間の中で新しいことにチャレンジしている、ポテンシャルの高い人たちです。
環境も違うので、目標もビジョンもまちまち。それぞれにスタイルや個性があっていいと思っています。ただ、論語とそろばんというように、そろばんを伴わない道徳は戯言に終わってしまいます。やっていることに市場価値があるなら、必ずお客さまが付いてきて契約できなくては報われません。ですから、人それぞれでも、必ず成果を上げられるようになることが目標です。
私は30年以上、不動産業界一筋でやってきました。決してエリート路線を歩んできたわけではありません。これまで人生でうまくいかなかったり、苦しんだ時期もありました。それでもなんとかここまで来られたのは、不動産業界のおかげだと思っています。恩人と呼べる先輩上司や、お客さまとの出会いによって、人生観・人間観・仕事観を学ぶことができました。この不動産業界に恩返しをする意味でも、個人で活躍できる不動産エージェントを創出し、不動産流通市場が活性化していくことを願っています。
イイタン一問一答
ご出身は
東京生まれのシティーボーイです。
現在のお住まいは
板橋区に20年以上住んでいます。
好きな駅
特に好きな駅はないのですが、強いて言えば東京駅でしょうか。
不動産業界に入ったきっかけは
起業した会社が倒産して、その負債を返すことができるのは、不動産業しかないと思いました。
不動産業界の面白さは
毎日違う情報に触れ、毎日やることが違うところです。
尊敬する人は
田舞徳太郎さん。平成10年に受講した研修センターの社長さんで、私の人生に大きな影響を与えた人です。
イイタンについてどう思いますか
人を軸にしたメディアだからこそ、もっとそれぞれの個性を際立たせていってほしいと思っています。
編集後記
「一人ビジネスを始めてから、私はずっと人とは違う方へ違う方へと舵を切ってきた」羽生さんの言葉の一つひとつには、どれも説得力がありました。社名である、グリーンフィールドとは、何もない原野に建物を建てていくという意味があるそうです。その名の通り、これからの不動産業界の、新しいスタイルを実践していく会社なのだな、と思いました。今回書ききれなかった、興味深いお話もたくさん。人としての魅力を感じる人でした。
取材/撮影 和田 文/並木 いくま
株式会社グリーンフィールド
羽生 卓
東京都港区南青山2-11-13 青山サクセスビル3F
1989年
不動産仲介会社 入社
1989年〜1998年
不動産業者4社に在籍
1998年
勤務している会社にて社内起業
2010年
株式会社AVATA 起業
2019年
株式会社グリーンフィールド 起業