タイル職人と不動産会社、2足のわらじを履く社長
お客さまも社員も笑顔になれる会社にしたい
イエカ・ライフ株式会社【立川市富士見町】
齊藤 浩
- 実家の稼業であるタイル屋から
不動産会社の取締役に - 不動産業は人と人をつなぐ仕事
言葉一つの重みが違う - 今は修行中の身
職人の世界とは全く違う、書類や実務を通して学んでいる - 将来的には、たくさんの経験をして
不動産業界にどっぷりと浸かりたい
イエカ・ライフ株式会社で社長に就任することになった経緯をお聞かせください
実家の稼業であるタイル屋から
不動産会社の取締役に
私はずっと家の稼業であるタイル屋を継いで、職人として生きてきましたから、それまで不動産業界のことは何も知らず、経験も皆無でした。今もタイル屋が私の本業で、イエカ・ライフ株式会社では週に1〜2日のペースで働いています。2足のわらじを履いているので、なかなか本腰を入れてかかりっきりになれないのが、私も悩むところです。
弟が以前勤めていた会社でお付き合いのあった、共信住宅株式会社が今のイエカ・ライフ株式会社の前身でした。弟が経営の相談を受けたのですが、当時業績があまり思わしくなく、前社長もご高齢だったので、なかなかその会社を引き継いで面倒を見ようという人は現れませんでした。そこで全くの素人である私に白羽の矢が立ったわけです。
当時は、私は本業のタイル屋で試行錯誤しながら、職人としての幅を広げようと必死で努力していました。しかし、なかなかうまくいかずに苦労していたところに、そんな私を見て、弟が「もし時間があるなら、不動産の勉強を、やってみないか」と声をかけてくれました。
経験のない業界で、家業をやりながら、代表取締役という職責を担うことに不安や戸惑いがなかったと言えば嘘になります。しかし、弟が頑張っている姿を近くでずっと見てきたので、弟を信じよう、弟のために一肌脱ごうという気持ちの方が強かったんです。それで引き受けることを決め、そこから猛勉強をして、宅地建物取引士の資格を取得しました。
職人と不動産業。違いや戸惑いはありましたか?
不動産業は人と人をつなぐ仕事
言葉一つの重みが違う
職人がモノを作る仕事であるならば、不動産の営業は人をつなぐ仕事です。今までとは全然違うと思うこともありました。
最初に違いを感じたのは、お客さまへの対応です。言葉遣いから違います。職人は普段、施主さまと相対して話をすることは、そんなにありません。基本的には挨拶と簡単な説明くらいです。「恐れ入ります」「ちょうだいします」「承知しました」といった言葉は、それまで使ったことがありませんでした(笑)。
営業の人を見ていると、言葉遣いだけでなく、一言ひと言にとても気を使っていると思います。間違ったことを言えば、それが後々、大きなトラブルになる可能性もありますから、いい加減なことは言えません。話をするのはもともと得意ではなかったので、人と話をするときは、2年経った今でも緊張してしまいます。基本的なことですが、まずはしっかりと挨拶をして、丁寧な言葉遣いを心掛けています。
今現在はどのようなお仕事を?
今は修行中の身
職人の世界とは全く違う、書類や実務を通して学んでいる
私は不動産に関する知識がなかったので、今の業務は書類の整理や雑務がメインです。不動産業界は書類の数がとても多く、一つひとつ事細かにチェックしていかないと、訴訟などの大きな問題に発展する可能性があります。ですので私も非常に気を使いながら、書類と対峙しています。
ときどきは現地へ赴き、ご紹介する予定の物件の調査もやっています。現地の状況を把握することも重要なので、境界票を確認したり、役所に行って、水道や下水が引かれているか確認するのも基本ですね。
それからベテラン社員といっしょに商談に参加させていただいて、契約や決済の現場を体験もしています。今はまだお客さまと接する機会はそれほど多くありませんが、お客さまへの接し方や、どのようなところにポイントを置いて話すのかなど、すべてが勉強です。
今の会社は、さまざまな経歴の人が集まっているので、型にはまらず、いろいろな角度で見て、新しい発想が生まれるところがあると思います。知識も経験も豊富な社員が入ってきてくれたことで、雰囲気もピリッと引き締まり、モチベーションも上がりました。
本来は私が代表として、社員たちをまとめる役割を担わなくてはならないのですが、今は、まだ私の余裕がなくて、社員やグループ会社の社長をしている弟に支えられている感じが強いですね。せめて社内が緊張しているときは、私がみんなの雰囲気を和らげて、一つにまとめる役割を担えるくらいに成長しなくては、という気持ちと危機感を常に持っています。
今後のビジョンをお聞かせください
将来的には、たくさんの経験をして
不動産業界にどっぷりと浸かりたい
職人というものは、体を使う仕事です。これから歳をとっていくと、体への負担が大きくなるばかりだと思うんです。不動産業は職人よりも体ではなく、頭を使う部分が多い職業なので、これからは不動産業へとシフトしていきたいと考えています。
本当はもっと勉強をして、不動産業に専念したいのですが、家業をいきなり放り出してやめるわけにもいきません。
私としては、タイル屋も広く言えば建築業界ですし、弟も建売の仕事をしているので、将来的には仲介よりも売主側の仕事をするのが最終的な目的であり、理想なんです。しかし、仲介業は一番不動産屋らしいと言いますか、仲介がわかっているということが不動産業の基本だと思います。ステップとして、今は仲介業についてを、一生懸命覚えなくてはなりませんね。
そして、イエカ・ライフ株式会社という会社を、お客さまも社員も笑顔になれる会社にしたいです。
営業面では、職人でもある私は、現場の大切さをよくわかっていると思うので、お客さまを積極的に施工現場へお連れする営業ができれば、と思っています。免震マットを敷いているところなどを、実際にご覧いただいて、耐震・制震・免震の家の良さや違いを感じていただきたいです。
この業界に来て2年。地道な作業をしっかりとやっていかなくてはいけないということを、しみじみ思います。これからはコミュニケーション力をアップして、経験を増やしていくことが課題です。
イイタン一問一答
出身は
秩父です。自然が豊かなところで、秩父夜祭りや芝桜、三峰神社などが有名です。
現在の住まいは
同じく秩父。生まれ育った家です。
好きな駅は
新宿駅です。とても都会的だと感じます。広くて複雑ですね。
不動産業界に入ったきっかけは
弟からのヘッドハンティングです(笑)。
不動産業界の楽しさは
人との出会いや繋がりでしょうか。
尊敬する人は
弟です。社交的でコミュニケーション能力が高い。私とは真逆です(笑)。
イイタンについてどう思いますか
面と向かって言うのは恥ずかしくても、サイトを見ていただけば、わかっていただけるので、とても良いと思います。
編集後記
自分のことを大きく見せる人は、世の中にたくさんいますが、齊藤さんは全く逆の印象を受けました。ある意味とても不器用。裏を返せば、嘘のつけない、誠実なところが齊藤さんの魅力でしょう。職人の世界から飛び込み、知識も経験もまだまだこれからかもしれません。しかし、コツコツと地道な努力を続けて、いつかこの会社をしっかりと支える大黒柱になられることを期待しています。
取材/撮影 和田 文/並木 郁磨
イエカ・ライフ株式会社
齊藤 浩
東京都立川市富士見町4-13-9 2F
2016年 9月
共信住宅株式会社 代表取締役就任
2018年 7月
イエカ・ライフ株式会社に社名変更
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